多くの方が、精神科に入院することに対して「一度入院したら退院できないのではないか」「薬漬けになってしまうのでは」といった不安を抱かれています。
しかし、精神科医療は大きく変わりつつあります。2004年に国が「入院医療中心から地域生活へ」という改革ビジョンを掲げ、精神医療・福祉のあり方を見直す動きが始まりました。当院もその流れに沿って、地域での暮らしを支えるための精神科医療に取り組んでいます。
入院による治療のメリット
当院では、24時間365日体制で、認知症ケアや精神医療に特化した専門スタッフが看護・ケアを行っています。入院することにより、ご家族が気づきにくかった症状の詳細な把握が可能になります。
たとえば「眠れない」という状態一つにしても、「寝つきが悪い(入眠障害)」「途中で何度も目が覚める(中途覚醒)」「朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)」など、具体的な状態が見えてきます。これらは、入院中の丁寧な観察を通して初めて明らかになるケースもあります。
また、認知症の方に見られる行動・心理症状(BPSD)は、ご本人のストレスや介護するご家族のストレスによって悪化し、悪循環を生むことがあります。そうした症状を一度入院で落ち着かせ、検査やお薬の調整を行った上で、再びご自宅や施設での生活に戻っていただく。これも当院が大切にしている役割の一つです。
入院中の生活と精神科作業療法(OT)
入院中は、退院後の生活を見据えた支援も充実しています。精神科作業療法(OT)では、ご自宅や施設での生活を想定した活動を通じて、日常生活のリズムを整えたり、身体や心の安らぎを得る体験を提供しています。
特に認知症治療病棟では、認知症に特化したリハビリテーションを行っています。昼夜逆転の改善や生活リズムの安定などを目指し、患者さんが安心して次のステップに進めるよう、サポートを行っています。
精神科入院は「安心して地域に戻るための一歩」
精神科の入院というと、昔ながらのイメージを抱かれる方もいらっしゃいます。しかし現在の精神医療は、地域での生活を支えるための一つのステップとして、より開かれたものになっています。
入院は、患者さんご自身やご家族にとって、これからの暮らしを整えるための大切な機会です。
当院はその一歩を、安心して踏み出していただけるよう、全力で支援しています。